研究概要 |
具体的な研究目標として以下の3つの課題を掲げた: (1)半正定値作用素のなす錘の束構造の解明 (2)作用素凹関数および作用素凸関数に関連した優加法性および劣加法性の解明 (3)トレースに関連して導入される汎関数の凸性の解明 一番目の課題に関しては,半正定値作用素のなす錘の中で,2つの作用素に対して最大下限が存在するための条件の決定という形で解決した。 二番目の課題に関しては,正の半直線上で非負な関数f(t)については,作用素凹性と作用素単調性が同一であることに着目し |||f(A+B)|||【less than or equal】|||f(A)+f(B)||| の形の不等式が,すべてのユニタリー不変なノルム,またどの半正定値作用素A,Bに対しても成り立つということを確立した。作用素凸関数に対しては逆向きの不等式が成り立つことも証明した。 三番目の課題に関しては,2つの行列の重複積のトレースの評価,また既知のトレース不等式を固有値の間のマジョリゼーションに一般化するという形で解決した。 本研究での方法および成果の有用性を広く世界の研究者に理解してもらうため,行列空間のテンソル積での種々のノルムの相互関係,および幾つかの異なる錐から導かれる異なる順序関係とノルムとの結び付きに関して,現在までに知られている結果をも含めた概説を英文の報告としてまとめた。
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