研究概要 |
本研究は量子論における非摂動効果の理論を開発し,さらに,それに関連して新しい超対称性を詳細に調べることを目的として始まった.非摂動効果については,本研究代表者を含むグループが開発した虚時間経路積分法におけるバレー法を用いるのが有用である.この方法を用いた1次元量子力学の非対称2重井戸ポテンシャルモデルについての計算からは,すでに「N重超対称性」と呼ばれる新しい超対称性が発見されていた.したがって,この理論をさらに発展させることが急務であった. 4年間に渉る本研究では,その当初目的が果たされ,さらにそれ以上の成果を挙げることができた.まず,バレー法を様々な量子力学モデルに適用し,非摂動効果を計算した.これらの非摂動効果の解析的結果から,バレー法により,摂動級数の漸近的振舞いが求められた.それにより,摂動級数のボレル特異性(収束性)が明らかとなるが,この特異性が存在しなければ,そこには超対称性がある可能性がある.この方法と,さらに代数的方法の適用により,まずある周期的ポテンシャルを持つモデルがN重超対称性を持つことが発見された.このモデルの超電荷は,非対称2重井戸のように運動量のN乗ではなく,あるN次多項式になっていた.これに触発され,一般的なN次多項式の超電荷を持つモデルの探索がなされた結果,6次ポテンシャル等のモデルがN重超対称性を持つことが新たに発見された. これらのモデルの超電荷は,ある独特の因子分解可能な形をしていた.そこで我々はそのような超電荷を持つN重超対称性を,「A型」と定義し,それを詳細に調べた.その結果,A型N重超対称性モデルは完全に解くことができた.つまり,そのようなモデルの超電荷,ポテンシャル等が完全に書き下された. 以上のように,本研究により,A型N重超対称性の理論は完成した.今後の課題としては,A型以外の型の定義分類等が挙げられる.
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