研究概要 |
本科学研究費当該年度である平成10年度(1998)平成11年度(1999)は、前年夏(1997)研究代表者(糸山)が大学院生都倉と共に提唱したUSp行列模型の性質の解明及びこの模型に基づく時空像に関する研究に、大部分の力を費やした。またここ半年はひもの摂動論を見直す意味を込めて、B fieldがある場合のp-p'系の性質を詳しく調べることにも力を注いでいる。論文1,2で与えられたUSp行列模型の基本的構成をふまえ、我々は理論に現れるfermionの果たす役割をまず調べた。(論文3,6)。fermionの積分を実行する際に波動関数から生じるNonabelian Berry phaseを通じて、Nonabelian monopoleがゆらぎとして各時空点に付随して発生していることが判明した。このmonopoleはひも理論のsolitonと呼ばれるべきものであり、通常の第1量子化による摂動論的ひもの理論との対応という立場からも興味深い。この結論は論文8でさらに考察を深め、Yang monopoleが作り出す4次元時空像というところにまで発展してきている。もう1つの大きな流れとして、IIB,USp matrix modelのSchwinger-Dyson方程式を用いた定式化という問題がある。行列を多体効果をも与える非摂動論的ひもの理論として認識するためには、この定式化は不可欠である。論文4では、この定式化をUSp行列模型に関して実行し、nonorientableな相互作用等を得た。この方程式系の更なる解析が望まれる。以上の発展のまとめは論文7に収められている。時空の非可換性と、ひも理論の構造との関係は、以前より何度か指摘されてきた。最近の発展に鑑み、我々は論文9,10で、B fieldがある場合のp-p'brane系のspectrum,scattering amplitude,そこから得られるnoncommutative spaceを持つlow energy effective actionについて詳しく調べた。多くの場合α′→0の極限で、おびただしい数の励起が低エネルギーで生じている。
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