研究概要 |
本研究では、弦理論の非摂動的定式化を、ソリトン・Dブレインやフェルミオンを用いた定式化の方向からと、時空特異点やブラックホールの観点から研究することを目的としていた。現時点では臨界次元(d=26)で量子化された弦場を使ってソリトン・Dブルインを扱うのは難しいが,c<1の非臨界弦では可能であり、Dブレインの組み合わせ論的考察や相互作用を組織的に扱うことができる。実際,福間と矢彦沢はその場合の弦場のオペレータ形式(以下「FY形式」と呼ぶ。)を構成しており,それはボソンスカラー場を用いても良いし,フェルミオン場を用いても定式化できるものであった。本研究において示したことは,時空座標と"境界上の宇宙項"ζが同一視できることに着目すれば,このFY形式を用いて,D-instantonと意味付けできる状態及びそれを生成するオペレータを構成することができるということである。さらに,このD-instantonは予想される境界の組み合わせ論を満たしていることもわかる。このことによって,FY形式を用いれば,弦場を用いてどのようにD-instantonを構成すればよいかを理解することができる。 次に、質量M、電荷Qを持った粒子によって生成される衝撃波を第一量子化された荷電弦が「通過」するとき、その弦がどのように励起されるかを調べた。このとき、衝撃波は荷電したAichelburg-Sexl時空として扱うことができる。その結果、電荷Qが小さいときは、重力とクーロン力が互いに打ち消し合うため、弦の励起は小さく、一方、電荷Qが大きいときは励起は大きくなることがわかった。さらに、D6-D2系における所謂enhancon機構についても考察を行った。
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