研究概要 |
揺動散逸動力学の観点から重核の融合・分裂反応に関する研究を行った。 1.重核融合反応におけるFusion hindranceの現象を,3次元ランジュバン方程式で取り扱った。融合のために必要な入射エネルギーを^<100>Mo+^<100>Mo,^<100>Mo+^<110>Pd,^<110>Pd+^<110>Pd系で評価し,さらに統計カスケードコードを用いて蒸発残留断面積を求め,実験値と比較した。 2.質量非対称な入射チャネルによる超重元素合成の動力学を3次元散逸動力学模型で研究した。1999年には,超重元素合成の新実験が相次いだ。特にロシアDubna原子核反応研究所の^<48>Ca+^<244>Pu反応の結果は我々の予想値に近いものであった。さらに,アメリカLawrence Berkeley研究所の低励起エネルギーでの実験に対応するため,殻補正エネルギーを融合段階から取り入れると共に,粒子放出の計算における準位密度パラメータの殻補正による励起エネルギー依存症などを改良した。 3.多くの入射・標的核の組み合わせに対して蒸発残留核断面積の系統性を調べ,超重元素合成に最適な入射・標的核の組み合わせと最適エネルギーを予想するるため,動力学計算の結果を入射エネルギーや非対称度,複合核の原子番号・質量数によってパラメータフィットした。 4.フォッカープランク方程式に対するMean First Passage Time(平均第一通過時間)の方法を用い,分裂障壁が0に近くなった場合の分裂幅を計算した。この枠組みをカスケードコードに組み込み,核分裂に対する生き残り確率を分裂障壁の低い系に対して調べた。
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