研究概要 |
NiY,NiCo,Ni,RhPdなどの金属触媒を用いて、直系分布の異なる単層カーボンナノチューブ(Single-Walled carbon Nano Tube : 以下SWNT)を作製し、光吸収及びラマン散乱を測定した。独自に開発したSWNT薄膜化技術を用いて光吸収スペクトルを測定した.近赤外から可視域にわたり,1次元van Hove特異点による状態密度の発散を反映した,ナノチューブ固有のπ→π^*光学遷移を見いだし、それがSWNTの直径に依存して大きく変化する事を明らかにした。観測される3つの吸収帯の、最初の2つは半導体のSWNT、3つめは金属のSWNTの吸収であることがわかり、金属に対応する第3吸収帯の光子エネルギーで共鳴ラマン散乱を測定すると、内部振動モードのバンドに金属相固有のFano型のスペクトルが現れることを明らかにし、我々はこれをMetallic windowと名付けた. 実際に得られる試料はSWNTが集合して束を形成したものであるため,孤立SWNTとの違いを調べるため,束の影響について詳しく調べた.SWNT試料に臭素をドープしてその後真空排気すると,束の中にだけ臭素が残り,孤立SWNTからは臭素がとれてしまう.この性質を利用して,孤立SWNTの共鳴ラマン散乱を測定した.その結果,金属相が共鳴する波長においてもFano型が観測されなくなり,Fanoの干渉効果は金属SWNTが束になっている場合にだけ現れるものであることがわかった.一方,試料を精製し,純度を90%以上に上げると,自発的に非常に太い束が形成されることがわかった.この試料のラマン散乱を測定すると,Breathing modeと呼ばれる低波数の振動モードの振動数が大きくシフトすることがわかった.これは理論的予測を裏付ける結果である.
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