研究概要 |
[1]CeRu_2の異方的ピーク効果 近年CeRu_2において上部臨界磁場H_<c2>直下でヒステリシス磁化が特異なピーク効果を示すことが報告されている.この現象は,臨界電流密度がH_<c2>直下で急激に増大することを示しているが, CeRu_2は比較的大きな常磁性磁化率をもっているため,このピークがFFLO相への1次転移によって生じているかどうか議論されている.我々はこれまでに純良単結晶試料の磁化測定から,ピーク磁場近傍で1次相転移が起きていないこと,超伝導が常磁性によってほとんど抑制されていないことを示し, CeRu_2ではFFLO転移は起きていないことを示してきた.本研究では,このピーク効果の原因をより明らかにするため,より低温下での精密磁化測定,試料の純良度の異なる単結晶試料での磁化測定を行ったところ,H//<100>での減磁過程のピーク磁化にカスプ構造を見つけた.cuspは温度降下とともに顕著になること,カスプが生じた磁場は増磁過程でピークが生じはじめる磁場にほぼ等しいことなどから,このカスプは磁束ピニングに起因していることがわかった.より試料の純良度が悪い試料では,印加磁場方向に依らずカスプが観測され,ピークが増大するのに伴って顕著になった.以上の現象は,磁束線のシンクロナイゼーション効果,磁束線の規則格子から不規則格子への動的転移に基づいた現象論的モデルによって,定性的,半定量的に説明可能である. [2]URu_2Si_2のCooper対の対称性 URu_2Si_2は超伝導ギャップに線状の節をもつ異方的超伝導体として長年精力的に研究されてきているが,Cooper対の対称性などの超伝導特性は未だ明らかにはなっていない.重い電子系超伝導体は常伝導磁化率が比較的大きいため,磁化や比熱などの巨視的な超伝導特性量にもPauli常磁性による影響が強く現れてくると考えられる.したがって,純良試料の磁化・比熱から得られるGinzburg-Landau(G-L)パラメータK_1,K_2の温度依存性および空間異方性を調べることにより,超伝導の対称性を議論することが可能となる.例えば,全ての磁場印加方向でK_1,K_2が温度降下とともに減少する場合は偶パリティ,全ての磁場印加方向でK_1,K_2が温度降下とともに増加する場合は等方的奇パリティとわかる.我々は,残留低抗比が200を越える純良単結晶URu_2Si_2の超伝導状態における磁化測定および比熱測定を行い,Pauli常磁性が超伝導に与える影響を調べた. K_1,K_2は1K以下の温度では,印加磁場方向に依らず温度降下とともに減少する.このことはURu_2Si_2の超伝導が低温で常磁性によって抑制されていることを示している.しかし,1.1K<T<T_cの温度範囲ではH//aでは温度降下とともにK_1,K_2が増加する一方,H//cでは温度降下とともにK_1,K_2が急減するという特異な振舞いを示しているため,さらに詳しく調べる必要がある. [3]UPd_2Al_3の超伝導特性の異方性 UPd_2Al_3はd波超伝導体として知られているが,熱力学的臨界磁場H_cなどのような超伝導特性量は明らかにはなっていない.我々は純良単結晶の磁化測定からH_cを求め,さらに磁場印加方向を変化させながら磁化測定を行い,その超伝導特性の異方性を調べた.測定結果から,H_cは0Kで6×10^2Oeであることがわかった.また,常磁性効果からの見積もりからPauli常磁性磁化率は全常伝導磁化率の10〜20%であることがわかった。
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