研究概要 |
・軌道揺らぎを取り入れた理論の定式化 まず我々は,既存の平均場理論をそのまま用いるのではなく,これを揺らぎの効果を取り入れることができるように拡張した。本理論は空間次元が無限大の極限で厳密になる。本研究で定式化した理論は,古典スピン系のspherical model近似を量子スピン系に拡張したものであり,フェルミ粒子系を局在させた理論よりも精度のよいものである。 ・軌道縮退電子系CeB_6及びCe_<0.75>La_<0.25>B_6の奇妙な秩序の解明 CeB_6のIII相に見られる奇妙な磁気秩序を,次隣接サイト間の擬双極子相互作用の存在を仮定して説明した。また,Ce_<0.75>La_<0.25>B_6において新しく発見されたIV相が八極子秩序である可能性を議論した。今までに観測されている相の他に,エネルギー的に近い相があることを見出した。これは,一軸性圧力などの外場で実現する可能性がある。この議論のために,Ginzburg-Landau展開を微視的に行うことのできる新しい汎関数積分法を開発した。 ・軌道縮退電子系における軌道・スピン波励起 複雑な軌道・スピン秩序状態からの素励起の分散関係を導出した。秩序状態の単位胞が16個のCe原子を含むため,素励起のプランチは48本ある。これをすべて求め,スペクトルと多極子相互作用には特徴的な関連があることを見出した。 ・1次元軌道縮退系の厳密な動力学 以上は,3次元系を対象にした研究である。一方,低次元系では揺らぎの役割が格段に増加する。その様相を最も明快な形で見るために,我々は1次元の厳密に解けるモデルを研究した。このモデルは軌道とスピンの縮退をSU(4)に単純化し,交換相互作用が距離の2乗に反比例(1/r^2)している。我々は,厳密な動的相関関数を実際に厳密に求めることに成功した。
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