研究概要 |
この研究の主な目的は,最近盛んに研究されている様々な自由度をもつ系がしめす異常物性を,その多様な自由度に着目することにより解明しようとするものである.これらの自由度の主なものとして,磁気的2重極と4重極および8重極がある.ここでは,4重極と8重極の自由度をチャンネルの自由度として,チャネルの自由度がどのように物理量を決めるかを研究してきた.すなわち,第一に不純物アンダーソン模型において1/N展開を用いて,補助粒子(スレーブボゾン,擬フェルオン)の赤外発散指数を正しく表すことができること示した.次に,チャンネルの自由度の数(M)により非フェルミ液体性がどのように現れるか.すなわち,チャンネルの自由度のないM=1では補助粒子の赤外発散の指数が相殺し,物理量には現われないことを示すとともに,M>1の場合には相殺せずに赤外発散が物理量にも残ることを示し,その赤外発散指数を決定した.またその延長で,アンダーソン格子模型を研究した.その結果として,チャンネルの自由度のないM=1の場合には,赤外発散は相殺して異常な項は現れず,フェルミ液体になるが,M>1では,電気抵抗に温度に比例する項が現れるなど非フェルミ液体性を示すことがわかった.第二には,局所相関の強い系である酸化物高温超伝導体の研究に,補助粒子を用いて1/N展開法を適用することにより,擬ギヤツプなどこの系に特有な現象を調べ,実験で提唱されている相図を再現した.擬ギャップの原因は,スピン揺らぎと超伝導揺らぎの相関に由来することを明らかにした.第三に,数値的な方法により高温超伝導体を研究した.また,動的な分子場近似法を用いることにより,メタ磁性や金属-絶縁体転移を研究した.チャンネルの寄与も明らかにした.
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