研究概要 |
相関の強い電子系における異方的超伝導や磁性に関する様々な問題をとり上げ、以下の成果を得た。 1.Sr_2RuO_4のスピン3重項超伝導状態に関する研究 この物質の超伝導状態は,μSR実験により時間反転対称性の破れた状態にあり,さらにNMRの実験からスピン3重項状態であることがわかっている。このような超伝導状態のクーパー対の対称性として最も自然なものは,カイラルp波状態とよばれるP_x+iP_yの対称性であることを提唱し,この状態の安定性や特徴を論じた。カイラルP波状態が安定化する微視的な機構として,Sr_2RuO_4の複数バンド構造とスピン軌道相互作用によるものに加え,電荷とスピンのそれぞれの自由度に対するカイラル・フィードバック効果が考えられることを明らかにした。カイラルP波超伝導状態に特徴的な現象として,試料端や不純物付近に生じる自発的電流と束縛状態の問題,外部磁場をかけずとも生じるホール電圧の計算,さらにジョセフソン効果について理論的に考察した。これらの解析には,ギンツブルグ-ランダウ理論にもとづく現象論のほか,ボゴリュ-ボフードジャン方程式による自己無撞着な計算を用いた。さらに,Ruを含んだSr_2RuO_4が示す「3K超伝導相」に対する現象論を展開した。 2.スピン軌道相互作用のある2次元強相関電子系に対して、異方的超伝導状態に導く微視的機構を提案した。 3.強磁性的交換相互作用と反強磁性的交換相互作用をともにランダムに含んだ1次元量子ハイゼンベルグ模型の熱力学的性質をスピン相関を量子モンテカルロ法や実空間くりこみ群により調べた。 4.一次元の拡張ハバード模型の相図を,ハーフフィリングの場合に対して決定した。ボンド秩序相の存在を明らかにした。
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