研究概要 |
強相関電子系で電子相関を圧力で変化させた時,量子相転移現象に関連した磁気秩序や超伝導相などが現れる.また,これらの磁性や超伝導の関係を量子臨界点という概念で理解しようとする研究が世界的に注目されている.特に,強磁性相近傍でp波の対称性をもつ超伝導が期待されている.ところで,高温超電導体La_<2-x>Sr_xCuO_4と同じ結晶構造を持つ超伝導体Sr_2RuO_4(T_c〜1.4K)は電子対の対象性がp波と考えられている.そこで,我々は圧力を手段としこの物質の電子相関の制御を試みた.その結果,加圧と共に超伝導が抑制され強磁性相関が発達している可能性を,面内の電気抵抗の圧力温度依存性から明らかに出来た. 一方,我々が圧力実験から電子状態の2次元性を明らかにしたように,エキゾチックな超伝導を示すRuやCu酸化物では常伝導状態は2次元性で特徴づけられる.しかし,一般に常伝導電子状態での低次元性は,3次元の長距離秩序である超伝導や磁気相を抑制することが知られている.そこで,圧力実験で直接格子間隔を変化させ,この矛盾を明らかにした.具体的には,我々は異方的圧力実験の手法を開発し,これらの系で電子状態の2次元性を変化させたときの超伝導転移温度の変化を調べた.その結果,La_<2-x>Sr_xCuO_4(T_c=38K)で2次元性を強めることでT_cを50K以上に高めることに成功した.そして,このT_cの圧力変化が2次元性の指標である面間カップリングでスケールできる事を示した.
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