研究課題/領域番号 |
10640380
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物理学一般
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
石渡 信吾 横浜国立大学, 工学部, 助手 (10223041)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1999年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1998年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 確率共鳴 / 化学振動 / 鉄-硝酸反応 / 引き込み / 同期現象 / 不応期 / ノイズ / 情報処理 / 協同現象 / 刺激応答 / Farey樹 |
研究概要 |
閾値を有する2値応答素子にノイズに埋もれた微弱な周期信号を入力すると、信号の山と谷でノイズが閾値を越える確率に差が生じ、これを利用することで高いS/N比で信号の周期を検出することができる。この減少は確率共鳴と呼ばれ、ノイズにさらされた生体系の信号処理の1つの可能性として注目されている。確率共鳴の特徴は、通信にける検波のように信号を忠実に再現するのとは異なり、通常の検波が不可能なほど強いノイズにさらされた信号に対して、その周期に確率的に同期した応答が得られることである。 本研究は、生体系の情報処理、特に末端の神経細胞における刺激応答を模擬する化学反応系を確立し、この化学反応系を用いて、確率共鳴現象を利用してノイズに埋もれた微弱な非周期信号の振動パターンを検出することを目的とした。化学反応系は硝酸中の鉄電極反応である。この閾値はFlade電位と呼ばれ不動態と振動状態を分ける。周期が1秒程度で2000回に及ぶ振動を得ることができる。 電極形状の工夫と空気バブリングで、安定な周期振動を長時間、しかも再現性よく得られるようになった。非線形散逸系の新たな実験系、特に神経系を模擬する化学反応系の確率に見通しが出てきた。この点こそが、本研究の最大の成果と言える。この鉄-硝酸反応系を用いて、興奮系においては確率共鳴現象を十分の精度で検証できるようになった。また、自励振動系においては、引き込み現象を再現性よく捉えることが可能となった。一方、本題であった、確率共鳴を利用した微弱信号検出については、電気回路においてその効果を間接的に確かめることができたが、化学反応のレベルでは不応期の動的な変化に基づく不完全なパルス応答が問題になり、十分な結果を得るに至らなかった。この点が今後の課題である。 以上、化学反応のレベルで、神経の刺激応答を模擬し得る実験系を構築することによって、生物の行っている情報処理に新たな知見の得られることが期待できる。また、確率共鳴を利用した微弱信号検出は工学的応用において新たな可能性を開くものである。
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