研究概要 |
本研究は,分子の振動励起状態について純回転スペクトル周波数をマイクロ波分光なみの良い精度で測定し,分子理論の検証に役立つような精密なデータを収集解析するのが目的である。用いた分光装置は富山大学の波長可変遠赤外分光計であり,これまで測定例の乏しい振動励起状態の周波数データを2桁以上改善することができた。 測定ではまずH_2O分子のv_2振動第1励起状態(v=1)を対象に研究を進めた。この状態は基底状態に比べ分子の数が少なくスペクトル強度が小さいが,用いた遠赤外分光計の感度を生かして測定を進めることができた。さらに,試料のセルをホットセル等にするなどの改良を加えて弱い吸収線も観測出来るようにし,ほぼ予定通りの成果をあげる事ができた。これまで知られていた分子定数で計算した周波数と今回の測定結果を比べると,これまでの計算値に数百MHzもずれているものがあることがわかった。我々の測定値を用いて分子定数を決め直し,測定値を百kHz程度で再現する分子定数を得ることができた。 また,実際の測定までは至らなかったが,より高い振動励起状態への光ポンピングもできるように,励起用の高出力半導体レーザー光源の開発も進めた。 一方,分子理論の検証には振動励起状態の分光データとともに,同位体分子の分光データも同様に重要である。今回測定を進めたH_2O分子ではその同位体のH_2^<17>O,H_2^<18>O,D_2Oなどで未だにフーリエ分光計のデータが使われているので,我々の分光計で測定をし直し,精度良い周波数表と分子定数を得た。
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