研究概要 |
本研究では下北半島地域と岩手山の南の地域において,中帯域地震計を用いて連続記録を収録し,それをもとに低周波微小地震の発生機構について研究した. 下北半島地域では大畑沖と渡島半島戸井沖で発生した低周波微小地震の震源決定を行い,下部地殻からモホ面にかけての領域で発生していることを確認し,震源が深さ方向に細長く延びた分布をしていることが有意であることを明らかにした.また,1Hzよりも低周波数の波がノイズレベルを超えるようなレベルでは含まれていないことが,本研究によって初めて明らかになった.particle motionの解析では,後続波群に実体波的な振動をする部分が含まれていることがわかった.S波とP波の振幅比と調和的な具体的な発生メカニズムとして,マグマだまり間をつなぐ管が開くことによって開口クラック型の振動が生じ,開いた管内をマグマ流が間欠的に流れることによってsingle force型の力が働くというモデルを考えた. 岩手山地域では,1998年岩手山内陸北部地震の余震のセンブランス解析やparticle motion解析の結果,この低周波後続波を伴う余震は地殻浅部低周波地震であることがわかった.低周波地震発生の時系列を調べると,低周波地震は本震発生直後には比較的多く発生していたが,時間とともに発生頻度が低下したように見える.また,アレイで記録した余震のPコーダ波には,コヒーレントな位相が多数含まれていた.本震発生前に生じた岩手山周辺での地震活動・地殻変動・超長周期地震の震源過程の研究から,岩手山の山体下にはマグマの貫入があったものと考えられている.まだ定性的な段階ではあるが,マグマから派生した地殻内流体の関与を考えると,低周波地震の発生が過渡的な現象であったことや,多くの散乱源が存在することを説明することができる.
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