研究概要 |
日本列島周辺の地震活動に見られる長距離相関や移動などの複雑な現象の成因を理解するため,100年間の測地データから推定された日本列島の断層系モデルを用いて,断層間の力学的な相互作用を入れた地震活動のシミュレーションを行った.まず,PC上でプログラムを開発し,オリジナルの断層モデル(断層要素数104)でのシミュレーションを行い,相互作用により断層間の連動や地震活動の移動現象が生じることを明らかにした. さらに,このプログラムを京都大学大型計算機センターVPP800に移植し,大要素数モデルでのシミュレーションを行った.オリジナルの断層系モデルの断層を長さ・幅方向にそれぞれ最大5分割し,断層要素数計2600のモデルを用いた.これにより,内陸においては最小M5級の地震まで表現できることとなり,幅広い規模にたいして規模別頻度分布の検討を行った.断層破壊強度を変えた計算も行った.これらの計算でシミュレートされた地震活動の特徴は下記のとおりである. (1)断層面全体を同時に破壊する地震はまれである. (2)中規模地震の頻度が高く、そのためGutenberg-Richter則を必ずしも満たさない. (3)駿河・南海トラフの大地震と西南日本内陸の地震活動の間には,相補的な関係が認められる. (4)駿河・南海トラフ沿いの大地震の発生域が時間とともに空間を移動する現象が見られるが,その移動方向は活動時期により異なる. また,近年のGPS連続観測データを用いた断層系の運動の推定と,新しいデータを入れた歪速度の再計算を行い,上記断層系モデルの妥当性を検証した.
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