| 研究概要 |
亜熱帯域には梅雨前線帯,南太平洋収束帯(SPCZ),南大西洋収束帯(SACZ)という顕著な亜熱帯前線帯がある.本研究では,衛星データを用いて亜熱帯前線帯の降水活動を解析し,大気大循環モデルを用いた数値実験を行って亜熱帯前線帯の生成機構を調べた.亜熱帯域の大規模な降水活動とその季節変化を,GPCP(全球降水気候計画)で作られた赤外・マイクロ波衛星観測と地上雨量計観測の結合データ,及びTRMM(熱帯降雨観測衛星)のPR(降雨レーダー)観測から作られたデータ,という2種類の月降水量データを用いて調べた.その結果,亜熱帯域では海域・陸域共に暖候期に降水量が増大し,この変化は寒候期に降水量が増加する中緯度の海域と好対照をなすこと,亜熱帯域の降水量の季節的増加には暖候期に活発化する亜熱帯前線帯の寄与が大きいことが示された.TRMMのPRやVIRS(可視赤外放射計),TMI(マイクロ波放射計)観測データを用いて,梅雨前線付近に発生した海上の活発なメソ降水系を解析した.これまで海上の降水系のレーダー観測は難しかったが,衛星搭載のPR観測により海上の降水系の3次元内部構造が示されると共に,VIRSの赤外画像から示される雲分布と降雨活動の関係などについて詳しい調査を行うことができ,TRMMの多重センサー観測の有用性を示すことができた.大気大循環モデルで地表を全て海洋とした実験を行い,亜熱帯前線帯の生成に及ぼす大気の熱源の役割について調査した.亜熱帯前線帯は熱帯の局在化した大気の熱源(現実大気の熱帯モンスーンに対応する)の影響下で維持されること,亜熱帯前線帯自身の降雨も大気の熱源として前線帯周囲の循環場を変化させ,前線帯の降水活動の強化に寄与していることがわかった.
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