研究概要 |
地球観測や惑星探査で微少磁場の計測器としてフラックスゲート磁力計があるが,近年は高い精度が要求され,センサコアの雑音レベルの低下が感度を左右する重要要素になっている。衛星搭載用センサはこれまで米国からの輸入品に頼ってきたが,輸入が望めなくなり,国産の低雑音コア開発が急務となっている。しかしこれまではセンサコアの雑音特性や最適センサを決定する実験が殆ど行われてなかった。 このような観点から平成10年度から12年度までの3年間実験研究が行われた。現存の国産コアと米国からの輸入コアの雑音,感度,温度特性比較を主眼として,基礎データを得た。センサ形状,励磁電流,励磁周波数の最適値を模索し,新たなコアの試作を行った。また,新型の三成分を一つのコアで計測できる小型センサコアの試作,衛星機器の帯磁や磁気モーメント量を計測する磁力計計測装置の開発にも着手した。 研究の結果,次のような結論が得られた。 (1)励磁周波数の最適値は,8kHz付近で最もS/Nが良く,励磁印加磁場の最適値は10Oeで雑音が小さく感度が良い。 (2)雑音は,パーマロイ長に反比例し,感度はコアの直径の3乗に比例し,巻き数には殆ど無関係である。また,コアのリング直径と磁化曲線の最大微分透磁率がほぼ比例し,従って磁性体の最大微分透磁率はセンサ感度を大きく左右する。 (3)温度特性では室温付近の温度変化オフセットはパーマロイ層数や直径、磁性体組成に相関は見られず,全コアとも平均で0.2nT/℃であり,センサ全体の温度変化(-20〜70℃)では国産コアの方が雑音変化が大きい。これはボビンとコア材の熱膨張率の差が大きいためと思われる。 (4)国産27mmφ15Tコアは、輸入米国産コアに比べて雑音レベルが低く,感度も良い。但し,ボビンとコア材の温度膨張係数の違いが大きいため,温度特性の点で米国産に劣る。
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