研究概要 |
ODP,DSDPによって、メキシコ湾、アラビア海、それにベンガル海底扇状地から深海底ドリルコアが採取された。本研究はそれらのコアを鉱物・地球化学的に分析し得られた結果から、それぞれの異なった堆積環境下の古環境変動を解析する目的で行った。粘土鉱物学的研究では、3海域で独自の特徴が認められた。メキシコ湾で採取された3本のコアでは、急崖の陸側のコアは海側のコアよりもsmectiteが卓越し、この傾向は初期洪積世から現世まで変わらないことを示した。陸側コア中のsmectiteはFe-AlまたはAl-beidelliteが卓越するのに対し、海側のそれはFe-Al-beidelliteが多い.この差異は供給源がmississippi河であるかないかに関係しているようである。アラビア海から採取された3本のコアには、palygorskiteの含有率が層準によって異なっていることが判明した。palygorskiteはアラビア半島など乾燥地域で生成され、それが大気によって海に運搬沈殿したものである。つまり、コア中の含有率の差異は、気候変動と密接に連動していて、アラビア海における第3紀中新世以降の古気候変動史を考察する重要な鉱物である。また、コア中には3-8面体のFe-saponiteが含まれていて、これは海底基盤岩ないしアラビア半島に分布するophioliteに由来したものと考えられる。ベンガル海底扇状地から採取された3本のコアの粘土鉱物組成は、初期中新世以来、非常に多様に変化している。しかし、この変化がヒマラヤの隆起と沈静化と密接に連動していることを指摘した。つまり、隆起が活発化するとchlorite,illiteの含有率が高まり、逆にsmectite,kaoliniteが増加した時は沈静化した時代に対応していることを指摘した。コア中に多く含まれているFe-beidelliteはインドのデカン高原から搬入されたものであることも指摘した。このように粘土鉱物学的には、古環境変動を考察する上で重要な成果が得られた。一方、地球化学的成果は、粘土鉱物学的成果を捕捉する上で重要な成果が得られた。例えば、砕屑性ケイ酸塩因子であるK/Al,Ti/A,Fe/Al,Cr/Al比の変動から粘土鉱物以外の鉱物粒子の堆積物への増減が予測されることや、Sr/Ca比は、生物生産活動の高低に連動していること、つまり古海洋環境の指標となりうることも指摘した。
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