研究概要 |
堆積相解析によって地層から,海浜や外浜,エスチュアリー,三角州,陸棚などいろいろな沿岸堆積環境の推定が可能になっている.沿岸堆積物は波や潮,流れの作用で形成され,また,これらの作用が複雑に影響しあって形成されていることが多い.本研究では,このような堆積物からそれぞれ営力を指示する堆積要素を抽出し,その堆積作用の実態(ダイナミクス)を明らかにすることを目的とした.このような堆積物として主に三角州堆積物を対象とした. 白亜系手取層群桑島層の河川卓越型三角州:石川県白峰村の桑島層は河川が支配的な三角州堆積物とその上位の三角州平野の堆積物からなることを認定した.三角州平野の氾濫原堆積物から産出する化石の種類,産状,層相からは,氾濫原の中の河川の流入や排水システムなどミクロな堆積環境の違いが推定された. 下総層群上泉層のギルバート型粗粒三角州堆積物:千葉県木更津台地下総層群上泉層にギルバート型粗粒三角州堆積物が認められた.この前置層の大規模フォーセット層理の内部堆積構造に"バックセット層理"が含まれることを明らかにした.バックセット層理は高流砂階で特徴的に発達する堆積構造で,高傾斜三角州前置斜面の堆積作用を明らかにした. 下総層群藪層の砂嘴-内湾システム:千葉県木更津台地の下総層群を対象として,堆積相分布と基底面等高線図の形状から,古東京湾の堆積作用とテクトニクスについて考察した.ギルバート型三角州や砂嘴の発達に古地理が影響していることが判明された. メキシコ湾沿岸の完新統Tecolutla deltaとNautla delta:2つの三角州堆積物の砂組成から推定される堆積営力について検討した.Tecolutlaは河川の影響が強く,その大部分が下部エスチュアリーをバイパスして沖合いに運ばれる.一方Nautlaでは河川の影響が弱く,波浪による侵食と沿岸流による再堆積および下部エスチュアリーへの侵入がおこっている.
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