研究概要 |
主要調査対象である北海道の上部白亜系蝦夷層群分布地域のうち,これまで未調査であった中央北海道中頓別地域の白亜系最上部層を中心に古地磁気試料を採取した.調査ルートは同地域の菊水川・ウツナイ川,およびそれらの支流沿いの3ルートである.これらの大部分は正帯磁を示し,ウツナイ川の一部の層準のみが逆帯磁を示す.これらの研究と並行して,南サハリン上部白亜系の古地磁気層序・大型化石層序の再検討を行い,蝦夷層群ばかりでなく北太平洋域上部白亜系の相互比較の基準となるような古地磁気模式層序を確立することができた.この模式層序と比較すると,中頓別地域の正帯磁は,Campanian階/Maastrichtian階境界のPolarity Chron 32nに対比できることが分かった.また,南サハリンの第三系を対象とした古地磁気学的研究により,サハリンから北海道に至る地域のテクトニクス史も明らかにすることができた.一方,ウツナイ川ルートから見いだされた厚い逆帯磁層は,Polarity Chron 32n前後の逆磁極期に相当する可能性も高いが,古第三紀以降の再磁化の可能性も否定できない.本調査地域の南に位置する古丹別地域の古第三系の大半が明瞭な逆帯磁を示すだけに,今後の更なる検討が必要である. 北海道以外では、九州天草地域御所浦島に分布する白亜系御所浦層群の古地磁気・岩石磁気学的研究を進め,それらの安定磁化成分を担う磁性鉱物が,初生マグネタイト粒子から続成過程によって二次的に晶出した極細粒のヘマタイト粒子であることを明らかにした.さらに,御所浦層群および他地域の研究から,白亜紀後期以降の西南日本の古地磁気極移動曲線を確立することができた。
|