研究概要 |
本研究計画の最大の目的は,浅海成炭酸塩堆積物形成に対するシアノバクテリア,固着性有孔虫を主体とする石灰質マイクローブの寄与を明らかにすることにある.この問題解決の基礎的資料とすべく,石炭紀〜トリアス紀の代表的マイクロバイアライト,関連の生物構築構造を検鏡・記載した.さらにシアノバクテリア,固着性有孔虫などのマイクローブ類についても特徴的なグループを同様に時代ごとに記載した. 調査・研究の対象とした主な石灰岩は,石炭・ペルム系秋吉・青海石灰岩,ペルム系舟伏山石灰岩,トリアス系神瀬石灰岩である.これらは,わが国の主要な海山型石灰岩として付加体中に含まれている.得られた石灰岩試料から,約300枚の岩石薄片を作成・検鏡した.必要に応じて薄片写真撮影も行なった. 本研究の結果,上記のいずれの石灰岩にも,多彩なマイクロバイアライトおよび関連する生物構築構造が含まれることが明らかになった.構造上それらのマイクロバイアライトは,シアノバクテリアと固着性有孔虫を主とするマイクローブの堆積物被覆・固定活動によるものと,シアノバクテリア自身のフレームワークによるものに大きく区分できる. 特筆すべき成果として,下〜中部石炭系ならびに上部トリアス系石灰岩にも多彩なマイクロバイアライトが発見されたことである.この時代の石灰岩はサンゴ,海綿などの礁性石灰岩を産することが知られているが,そうした時代の石灰岩にもマイクローバイアライトが広く認められた事実は注目に値する.
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