研究概要 |
平成10〜12年度に行った日本列島とロシア極東地方のオフィオライト岩類の岩石学的比較研究において,次のような成果が得られた.まず,日本国内において,夜久野オフィオライトの兵庫県上郡変斑れい岩体が,古生代後期の海洋性島弧断片であることを明らかにした.古生代前期の大江山オフィオライトに伴う藍晶石を含む高圧型変成岩の年代について,新しい年代測定値を加えて地質学雑誌の2000年9月号に報告した.また,新潟県青海町から,エクロジャイト質藍閃石片岩を発見し,古生代後期の蓮華高圧型変成作用が,青海地域においてもエクロジャイト相に達していたことを明らかにした.一方,ジュラ紀付加体である丹波帯と北部北上帯において緑色岩類を研究し,岩手県内の北部北上帯緑色岩について従来海洋島アルカリ玄武岩が卓越するという研究があったが,本研究で青森県内のものを調査したところ,海洋島ソレイアイトを主とすることがわかり,付加した海山の岩石学的性質に地域的多様性が存在することが明らかになった.次に,ロシア極東地方においては,コリヤーク山地のエリストラートバ・オフィオライトにおいて,島弧オフィオライトが海洋底マントルに貫入している特異な産状を明らかにし,玄武岩,ドレライト,斑れい岩,超苦鉄質岩及びクロミタイトの岩石学的性質を詳細に検討した論文を公表した.また,日本海を隔てて日本と向き合うロシア沿海州シホテアリン山地の古生代オフィオライト及び藍閃石片岩についても研究し,環太平洋地域で最も古いオフィオライトの一つであるハンカ・オフィオライトについて,受動的大陸縁(リフト帯)での形成を示唆する地質学的産状と,マンガンに富む特異なスピネルの産出を報告したロシア人と共著の論文を印刷中である.これらの成果は,新生代の火山岩の比較研究の成果と合わせて,「日本海およびその周辺域の岩石」という出版物にまとめて公表し,国内の研究成果の一部は,一般向けの「北陸の自然をたずねて」という書物に公表した.
|