研究概要 |
測定方法の改善:温度制御方式とバッファーロッドの材質の改善により,スペクトル測定精度に格段の向上を見た.また,球殻三層からなる振動系の理論的解析から共振高圧測定を実施する際の指針を得た.そして,Heガスを用いた高圧共振法により圧力係数の測定が可能なことを示した. 地球物質の弾性・状態方程式:カンラン石の高圧相β-及びγ-相を合成し,試料球の共振スペクトル測定により弾性率とその温度勾配を得た.その結果を用いて上部マントル転移層におけるカンラン石含有量を見積もり,30〜50体積%を得た. スピネルMgAl_2O_4単結晶球についての高温での精密測定により秩序無秩序転移すなわち陽イオン間の席占有率xと弾性率の間の関係を解明した.立方晶系の弾性率のうち剪断弾性率C_s(=(C_<11>-C_<12>)/2)の温度変化が特徴的である.xの影響はC_<44>においてもっとも小さい.一方,各共振ピークの半値幅より弾性率C_<44>に対応する内部摩擦Q_<44>^<-1>が高温域で特徴的な温度変化を示した.席交換反応速度の活性化エネルギーを見積もり,E_a=300kJ/molを得た.弾性波速度に関しては固体の密度と平均原子量の影響が主張されているが,それ以外の要素としてスピネルを例に,結晶内での陽イオンの席選択の効果が弾性率に大きく影響することを示した. YAGの弾性率の温度変化と修正ワッチマン式:YAGのスペクトルは加熱・冷却時のデータ間に履歴現象はなく,また,特別な異常も見られない.この様な物質の体積弾性率K_sの温度変化については,K_s=K_<s0>-g・Eまたは,K_sを一般のスティフネス弾性率Mに置き換えたM=M_0-g・Eでもってよく表される.ここにEはデバイ固体の内部エネルギー,gは弾性率ごとに決まる定数である.上式をYAGについて精密に測定された弾性率K_s,C_<11>,C_<12>,C_<44>,及び剛性率μに適用ると互いによく似たデバイ温度θが得られる.カンラン石の弾性率の温度変化にも応用できる.
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