研究概要 |
マントルは,上部マントル,遷移層,下部マントルの3層構造を持ち,それぞれの層の境界(地表からの深さ410kmと660km)では,密度とP及びS地震波速度が不連続に変化する.410km不連続面は,(Mg,Fe)_2SiO_4オリビンから変型スピネルへの相転移,一方660km不連続面は,(Mg,Fe)_2SiO_4スピネルから(Mg,Fe)SiO_3と(Mg,Fe)Oマグネシオウスタイトへの分解と考えられている.本研究で得られた主な成果は以下のとおりである。 (1)410及び660km不連続面に関係するマントル鉱物である,Mg_2SiO_4オリビン,変型スピネル,スピネル,MgSiO_3ペロフスカイト,MgOペリクレイスについての極めて精密な原子間ポテンシャルの導出に成功した. (2)得られたポテンシャルを用いた分子動力学(MD)計算機シミュレーションにより,上記マントル鉱物について,410及び660km不連続面を想定した高温高圧下における密度とP及びS地震波速度を高精度で求めることができた. (3)MDシミュレーションで得られた結果を,地震波等からの地球内部観測データと比較検討した.その結果410及び660km不連続面とも,密度変化についての地震波観測データPREMには,大きな誤差が含まれることを見出した. (4)410km不連続面におけるMD結果を地震波観測データと比較することにより,P及びS波の速度変化のいずれについても,(Mg,Fe)_2SiO_4成分の割合が最大約50%であることを見出した。 (5)660km不連続面については,密度及びバルク音速変化の両者共,今回のMD計算は,shearer and Flanagan(1999)の地震波モデルと極めて調和的であることを見出した。
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