研究概要 |
平成12年度は、先ず、透輝石(Di)30モル%、エシネアイト(Es)70モル%組成での晶出輝石について更に詳細な情報を得るために、1350,1325,1300,1250℃で結晶晶出実験を行った。EPMAによる分析の結果、各温度で得られた単斜輝石の化学組成はそれぞれCa_<0.98>(Mg_<0.48>Al_<0.26>Fe_<0.29>)(Al_<0.57>Si_<1.43>)O_6,Ca_<0.75>(Mg_<0.03>Al_<0.81>Fe_<0.16>)(Al_<0.48>Si_<1.52>)O_6,Ca_<0.74>(Mg_<0.02>Al_<0.82>Fe_<0.15>)(Al_<0.48>Si_<1.52>)O_6およびCa_<0.74>(Mg_<0.04>Al_<0.84>Fe_<0.19>)(Al_<0.44>Si_<1.56>)O_6であることが示された。1350℃では実験誤差の範囲内で化学量論を満たした単斜輝石の晶出することが、1325℃以下の温度で晶出する単斜輝石は明らかに非化学量論的であることが分かった。そして、1325,1300,1250℃で晶出する単斜輝石の化学組成は実験誤差の範囲内で同一といえ、しかも、Mgを殆ど含んでおらず、Alの含有量が非常に多いという特徴をもつ。次いで、Di_<40>Es_<60>組成のガラスについて、1350℃で実験を行ったところ、この温度ではDi_<40>Es_<60>組成の場合も化学量論単斜輝石が晶出するという結果を得た。前年度までの成果をも加えて総括すると、Di-Es-An擬3成分系のEs成分に富む組成域では、約1325℃以下の温度では常圧下でも非化学量論単斜輝石が晶出すること、また、同じ組成点でも、高温では化学量論単斜輝石が、比較的低温では非化学量論単斜輝石が晶出することが明らかにされた。
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