研究概要 |
振動励起ラジカルの他分子との衝突における振動緩和過程および化学反応過程の分岐比を決定する実験的研究を行った。O_3/CH_4/N_2混合フロー系にKrF(248nm)レーザを照射し,O(^1D)+CH_4反応でパルス的に生成したOHラジカルの5振動準位(X^2Π_i,O【less than or equal】v【less than or equal】4)をレーザ誘起蛍光(LIF)法で検出した。生成直後から各振動準位のLIF強度の経時変化を観測し,本研究において独自に開発したProfile積分法によって各振動準位の総括反応速度定数を決定した。また,O(^1D)+CH_4反応で生成するOH振動初期状態分布の既報値を利用して,次式で表される2つの過程の分岐比を決定した。 OH(v)+CH_4→OH(v-1)+CH_4 :振動緩和 →反応生成物 :化学反応 化学反応過程に関しては,振動準位が高いほど,化学反応過程の分岐比が増大することを初めて定量的に示し,v=0を基準としてk(v=2)/K(v=1)/k(v=0)=143/33/1の関係があることを明らかにした。また,類似のOH(v)+NH_3系については,これまで報告例がなかったOH(v=4)+NH_3の反応速度定数を決定した。 HCO+O_2系に対しては,HCOのB^2A'-X^2A'遷移を利用するLIF検出法を利用して,振動モード((000),(010),(001))のO_2との反応速度定数を決定した。B^2A'-X^2A'遷移の利用によって,過去のいかなる研究よりも低い親分子濃度での実験を可能にし,異なる振動モードに対する反応速度定数を初めて報告した。従来の非線形フィットの問題点を解決する線形Profile積分法を確立し,その応用例として振動緩和と化学反応の分岐を決定するという目的が計画通り達成された。
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