研究概要 |
NOのE状態の単一振動回転準位(v=0,N_E)をA状態経由で励起すると、E,D状態間には反転分布が成立しASE発振を起こす。この時回転遷移としてはR枝およびP枝が許容であり、D状態ではN_D=N_E±が分布される。R枝およびP枝の遷移強度に大きな差異はなく、見かけ上上記二つのチャンネルの強度はほぼ等しい。いまはN_D=N_E-1をもう一台のレーザーによってあらかじめpopulateしておくと、N_EとN_D=N_E-1の間の反転分布は形成されない。したがってR枝によるASE緩和は禁止される。実験では、実際にR枝がほぼ完全に消失することが確認され、その強度減少分を補うようにP枝の強度が増加した。以上の観測結果は、競合する二つのASE緩和チャンネルのどちらか一方を反転分布を操作することによって封鎖し、populationの移動が制御できることを示すものである。 NOのK状態の単一振動回転準位(V=0,N_K)をA状態経由で励起すると、K→EおよびK→Fに相当するASE発振が起こる。波長領域はそれぞれ2.92μmおよび4.46μmある。このときあらかじめ励起レーザー光を二つに分け、二つのセル(シード光発生用セルとメインセル)に入射する。フィルターによってレーザー光を遮断し、石英板によってK→E遷移に対応する2.92μmのみを取り出しシード光としてメインセルに導入する。メインセルからのASEは、シード光を導入しないとき二つの遷移がほぼ同等の強度で観測された。この条件でメインセルにシード光を導入すると、K→Eには変化がなく、K→E遷移のみが増幅された。またK→Eに引き続いて起こるE→D遷移のASEも倍数に増幅されたが、K→F経路のうち一つの経路の寄与のみを選択的に増幅した証拠となる。本研究の結果は、シード光の波長を選択することによってpopulationの流れを操作できる可能性を示唆している。
|