研究概要 |
本研究課題のもと検討し,結果以下の成果を得ることができた。ケテンとオレフィンやジエンとの環化付加による,シクロブタノンの生成反応が[2+2]型環化付加反応(Staudinger反応)で起こることはよく知られている。この反応は対称禁制にも拘わらず4員環C-C結合形成は容易に起こる。このような基底状態[2+2]型反応の特異性は他に例を見ないため,その特徴は種々の有機合成反応に幅広く応用されている。反応機構については,最近まで2段階双性イオン介在機構が定説となってた。しかし実証例が未だになく解決を見ていなかった。我々は,ジフェニルケテンとシクロペンタジエンとの反応について検討した結果,新しい概念として「ケテンはジエンを認識する」ことを得た。この概念が,一般的なことであることを明らかにするため,ジエン類(環状のジエンおよび鎖状のジエン)とジフェニルケテンとの反応を検討した。鎖伏のジエンの場合には,従来の反応例で得られるところのシクロブタノン体([2+2]付加生成物)は中間体であり,最終生成物は[4+2]付加生成物であることを見い出した。ジエン類とジフェニルケテンとの反応において何故、このような大きな誤りが生じたのか,その原因を探りケテンとジエンの反応機構の最終的解明をおこなった。さらに,これらの得られた結果をもとに,反応性について最新の分子軌道理論によって吟味検討し,各素過程の遷移状態構造決定を行ない,非経験的分子軌道法により精度高い活性化エネルギーの評価を行った。これらの検討によって,「ケテンは不飽和系を区別して反応する」という,真のケテン類と共役不飽和化合物との反応についての考え方を提案することができた。すなわち,ケテンのC=O結合を通してジエン認識をし[4+2]型の環化付加反応が進行する。続いてクライゼン転位が起こる。ケテンージエン反応はこれら二つの協奏反応の組み合わせ2段階反応機構であることが判明した。さらに,鎖状のジエンに対するケテンの反応挙動についての検討からケテンはs-Cisジエンのみを認識して反応することを明かにした。
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