研究概要 |
本研究は導電機能にスイッチング機能を付与した新しい機能性分子素子および金属の新しい触媒機能を開発することを目的として行ったものであり,金属に配位することのできるピリドフェナジンおよびビピリジル系について検討した。その結果,合成した各化合物の電気化学的性質をCV法により測定したところ,金属の配位部位に与える酸化電位は置換基が電子供与性の場合にのみ高くなり,電子吸引性の場合には変化が見れらなかった。このことはフェナジン骨格に組み込まれた窒素原子の孤立電子対からの電子移動が優先するためと考えられる。したがって,スイッチング機能の発現には電子供与性置換基の導入が不可欠であることが分からた。さらに金属配位部位としてジアザフルオレン骨格に注目し,TTFの部分構造と結合させたドナー分子を合成した。このドナー分子のルテニウム錯体では,配位子の数により中心金属の酸化電位力制御できることを明らかにした。 次に分子導線の有効性を検討するためにアセチレン共役系を導線とし,その末端にTTF分子を組み入れた化合物の合成を行った。電子スペクトルでは共役系の拡張が確認でき,金属が配位していない状態での蛍光発光が観測され,導線を介して電子移動が起きていることを明らかにした。また結晶の熱分析により相転移が観測されたが,アルキル基の長さの違いに依存していることが分かった。このことは結晶中で分子配向による組織化が起きている可能性を示唆している。さらに光応答性が良く知られているアゾベンゼンに導電性を示すTTFを結合させたドナー分子を合成し,光異性化と熱による再生を観察し,可逆的異性化を明らかにした。DDQとの電荷移動錯体は半導体領域の伝導度を示したが,オンオフ機能だけではない一定の閾値をもったスイッチング機能材料の可能性を示唆している。今後はこれらのスイッチング機能材料としての評価が課題である。
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