研究概要 |
立体障害の大きい熱不可逆性ビスチエニルフルギド,3,4ビス[1-(2,5-ジメチル-3-チエニル)エチリデン]-3,4-ジヒドロ-2,5-フランジオン,を2-ブチン-1,4-ジオール誘導体のパラジウム触媒を用いたカルボニル化法により合成し,フォトクロミック反応挙動を解析した。 ビスチエニルフルギド,トリクロロエチレンをブチルリチウムで処理した後,3-アシル-2,5-ジメチルチオフェンとの反応によりアセチレンジオールを収率45%で得た。アセチレンジオールをパラジウムアセテート存在下,一酸化炭素との反応(カルボニル化)によりビスチエニルフルギドを3種の構造異性体混合物で得た。これら混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し,2つの二重結合に関してEE,EZ,ZZ,の3種の異性体をそれぞれ4,3,1%で得た。異性体の構造は,^1H NMRおよびそれらのフォトクロミック挙動より確定した。ZZのトルエン溶液に366nm光を照射すると,EE,EZ,および2種類の閉環着色体(C_<EE>,C_<EZ>)が生成した。2種の閉環着色体に554nmを照射すると,EE,EZが生成した。EEおよびEZから生成する閉環着色体(C_<EE>,C_<EZ>)は,互いにジアステレオマーの関係にある。366nm光照射の光定常状態では,EE,EZ,ZZが全体のそれぞれ17,14,8%存在し,C_<EE>が58%生成するのに対し,C_<EZ>は,3%であった。すなわち,EE二重結合異性体から生成する環化着色体C_<EE>がジアステレオ選択的に生成する(90%de)ことが判った。
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