研究概要 |
化学状態の解明にXANES(X-ray Absorption Near-Edge Structure)を適用することを目的として,本研究では,第1原理DV-Xα分子軌道法によって理論スペクトルを求める方法の開発と改良を行い,固溶体・溶液の化学種に適用した。従来方では計算の近似が大きいため結果から読み取れる情報が少ないという障害があったが,この障害を小さくできたので,議論できる研究領域が拡がった。固体の計算,クラスターモデルの拡張や電子の空間分布の求め方などを検討し改良した。固体や溶液に適用するためには,広い空間にわたる電荷密度分布のセルフコンシルテンシーが必要で,その効率良い計算法を探った。 CeO_2結晶に関しては,Ceイオンの化学結合に関心が高いことから,今までXANESを用いた数多くの研究が行われ,化学結合に関する議論が行われている。本研究では,CeO_2および、CeO_2・La_2O_3固溶体の理論XANESスペクトルを求め,酸素欠陥に隣接したCeの化学状態と局所構造を議論した。そして,LiFなどのリチウム化合物のXANESスペクトルを求めたところ,クラスターの理論スペクトル計算から,ピークの特徴が明らかになった。つまり,低エネルギーのピークが励起子によるものでLi-F間の電荷移動をとらえており,高エネルギーのピークがLi-Fの局所構造によるものであることがわかった。また,硫黄酸素酸イオンの最近接原子である酵素の位置・角度に敏感にスペクトルが変化し,理論スペクトルはそれを再現した。XANESスペクトルが,SO^<2->_4四面体構造の歪みに敏感であることが明らかになった。
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