研究概要 |
(1)中性子放射化によるホットアトム現象で選択的に金属だけが励起した時の金属フラーレンの変化を追跡することを目的として研究を行った。1)放射化によって生成する放射性同位体比の変化を調べると金属原子の反跳の影響が分かる。Yb@C_<82>,Yb@C_<84>,Gd@C_<82>についてYbは^<169>Yb/^<175>YbをGdは^<153>Gd/^<161>Gd(Tb)について放射化後にHPLC溶出して元の位置に確認された成分の同位体比を求める約0.76の値を得て、金属とフラーレンケージの物理的安定性が27-29eVのエネルギーに閾値があることが分かった。2)LaからLuまでの8種類の金属を含む金属フラーレンを合成して、中性子放射化を行いHPLC挙動を検討した。2段階のHPLC展開によるM@C_<82>の単離過程について放射化をクルードで行った場合と単離後に放射化した場合の割合を求めた。生き残り率は元素には依存せず20%となり、物理的影響で考えられる率の半分になった。 (2)Sm,Gd,Ybについて代表的な金属内包フラーレンである M@C_<82>(M=Sm,Gd,Yb)を精製し、中性子放射化し、生成した放射性同位体がさらにβ懐変で測定可能な放射性同位体で原子番号が異なる系を生じる時、これをトレーサーとしてそのHPLC挙動を検討した。Sm-Eu,Gd-Tbの系では原子番号が変わっても金属内包フラーレンは安定に存在することが分かった。これに対してYb-Luの系では大半の金属フラーレンが安定ではなく何らかの化学反応を起こすことが確認された。さらに、^<146>Gd-^<146>EuのEc懐変で原子番号が変化する系についてもHPLC挙動を検討した。結果は大部分が安定で存在することが確認された。これらの結果から、+3の異性体の一つが+2で3種類見いだされている内の1つと同じであること、そして、他のケージのものは金属の価数が変わると化学的に不安定になることが見いだされた。
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