研究概要 |
層状粘土鉱物であるスメクタイトと安定なラジカル種を形成することが知られている種々の芳香族アミンを用いて、新しい層間化合物を創製し新奇な無機-有機複合伝導体を開発することを目的として研究を行なった。この結果、スメクタイトの一種である合成サポナイト及びスメクタイトと同じ構造を持つが、より電荷密度の高い合成フッ化四ケイ素雲母を用いて、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、N,N,N',N'-テトラメチルベンジジン、N,N,N',N'-テトラメチルフェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレンの層間化合物の合成を行い、それぞれの粘土層間でのラジカル生成に成功した。得られた試料の粉末X線回折測定により層間化合物の形成による層間距離の増加を調べた結果、アミノ位にメチル基が置換したアミンでは分子面が粘土層に平行になるように寝て層間に入るのに対し、メチル置換していないアミノ基を持つ2つのアミンでは分子面が粘土層に対して垂直に近い配列をとることが明らかとなった。さらにこれら2つのアミン(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン及び1,5-ジアミノナフタレン)の層間化合物は比較的高い電気伝導性を示すことを明らかにした。この電気伝導性は共存する水分によってサポートされており、真空排気下ではほとんど伝導性を示さない。また、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンの層間化合物では直流電圧を印加した場合には速やかに分極が進み伝導度が減少するのに対し、1,5-ジアミノナフタレン化合物では直流測定でも伝導度の時間変化は見られなかった。この事実は前者が主にアンモニウムのプロトン移動によるイオン伝導が主な伝導機構であるのに対し、後者では電子伝導が電気伝導を担っていることを示唆する。
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