研究概要 |
気液界面および液液界面に自発的に形成される界面有機超薄膜の構造や状態を調べるために、膜分子の各官能基ごとの情報が得られる赤外外部反射スペクトルの測定方法の確立を目指した。さらに、確立した測定法を用いて、界面単分子膜の状態に及ぼす溶液濃度,温度,界面張力の影響などについて明かとし,バルク溶液における状態との相違について検討した。 ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液系に赤外外部反射法を適用し、気水界面に吸着したSDS単分子膜の状態について検討した。その結果、赤外外部反射スペクトルのレファレンスとしてフッ化炭素鎖を持つ脂肪酸で覆った水溶液系を用いれば、界面に吸着したSDSだけの情報が得られることが明かとなり、ギブス吸着膜系の赤外外部反射スペクトルの測定法を確立した。この方法を利用して、SDSの吸着状態あるいは吸着量に及ぼす溶液濃度、温度の影響を調べたところ、SDS濃度が臨界ミセル濃度CMC(8mM)より低濃度(3mM)で既に飽和吸着していることが明かとなった。また、クラフト温度以下に溶液温度を低下させても、吸着分子の状態はほとんど変化しないことも証明できた。さらに、バルク水溶液中と気水界面におけるSDSの状態を比較したところ、気水界面の方がSDSの炭化水素鎖の秩序が高いことも明かとなった。 不純物としてミリスチン酸(MA)を含むSDS水溶液系にも同様の手法を用いて検討したところ、気水界面のMA濃度はCMCから顕著に減少することや界面吸着したMAの状態はミセルに可溶化された状態と同じであることなどが明かとなった。また、光応答性単分子膜系の研究から、膜分子の発色団の会合状態と炭化水素鎖の秩序が密に相関し、それらの状態が光異性化能を支配していることを示した。 現在、赤外外部反射法を用いて気水界面の分子認識系について検討している。
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