研究概要 |
生体内胆汁酸測定法の飛躍的な進歩により、特異な化学構造を有する胆汁酸代謝異常成分(異常胆汁酸)が肝胆道疾患患者体液中から有意な量で検出・同定され、それらが病態解析をする上での疾患の特異的マーカーになりうるものと期待されている。最近、新規異常胆汁酸として胆汁酸エステルグリコシドの存在が予想され、肝胆道疾患との関連から生物学的・生理学的重要性が指摘されているにもかかわらず、全く検討が加えられていなかった。本研究では一連の胆汁酸エステルグリコシド標品の合成を行い、それらの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による高感度・高選択的測定法を開発し、生体試料中からの胆汁酸エステルグリコシドの検出・同定とフロフィル分析を試み、肝疾患の早期発見・診断に資することを目的とした。 従来、標品の得難いことが胆汁酸エステルグリコシドの測定法を開発するうえで大きな隘路となっていた。そこで有機合成化学的手法を駆使し、リトコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸およびコール酸を対象として、それらのC-24エステルグルコシドの合成を試みた。その結果、遊離胆汁酸と2,3,4,6-O-ベンジル-D-グルコヒラノースをカップリング試薬、2-クロロ-1,3,5-,トリニトロベンゼン、の存在下、ピリジン中で縮合反応に付すると胆汁酸1'-O-アシル-D-グルコシドベンジルエーテル誘導体のα-およびβ-アノマー体を好収率で生成した。次いで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法と包接試薬あるいはイオンヘアー試薬を移動相添加物として組み合わせた逆相包接HPLC法、逆相イオンヘアーHPLC法を開発し、胆汁酸エステルグルコシドの至適分析条件を確立し、高選択的・高感度測定法に成功した。本法は感度、特異性に優れ、今後生体内胆汁酸エステルグルコシドの体内動態を研究する上で大いに役立つものと期待される。
|