研究課題/領域番号 |
10640607
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生態
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 欣也 北海道大学, 水産科学研究科, 助教授 (30222186)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2000年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1999年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1998年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 生活史 / 共食い / 仔魚 / 外洋 / 生き残りゲーム / 餌利用 / 暴力の蔓延 |
研究概要 |
多くの水生生物において、発生初期過程に共食いが生じることが知られている。共食いは個体の捕食器形態の進化をもたらす。同種同一年齢個体間の共食いの進化に関する研究を、海洋表層性魚類の仔魚の形態比較と、進化ダイナミクスモデル解析の2つの方法によって行った。 形態比較研究: 共食いは、捕食器の形態と共に進化すると考え、スズキ目の表層回遊性魚類の生活史と仔魚標本の上顎の体長に対する比を測定値から以下の仮説を検証した。 (1)産卵場が遠洋にあるものは、沿岸のものより仔魚の顎が大きい。 (2)親の食性に従い、仔魚の顎の大きさが決まる。 仮説1は支持され、仮説2は棄却された。 ダイナミクスに関する研究: 共食いは、同一種内個体を餌として利用するので、餌選択性の進化としての側面がある一方、遭遇個体間の生き残りゲームとしての側面を持つ。共食いが生じる進化過程の初期状況を想定すると、攻撃的な個体が同種を容易に食するための形態・行動特性は有していないと考えられる。その場合、餌選択の面から共食いが自然選択上有利に働く形質にならない。 モデル解析によって以下のことがわかった。(1)餌利用性の予測に従い、貧栄養環境において、共食いはより進化しやすくなる。(2)共食いの進化は、集団を構成する個体の共食性の程度に依存する。集団を構成する個体の共食性が低い場合、共食いの攻撃性は集団内で沈静化し、集団は非共食いへ進化安定する。(3)集団内で共食い個体と非共食い個体が混在する2型平衡は、進化的に不安定であり、進化の結末はどちらかのタイプが集団を占めることになる。 連続な形質変異を仮定したモデルから、進化的結末が非共食い・共食いどちらの場合も、進化過程では、共食い傾向が徐々にエスカレートする。進化的結末が非共食いの場合、共食い傾向のエスカレーションがやがてとまり、突然非共食いが急速に進化する。これは社会における暴力の蔓延・沈静の時間動態を比喩的に示唆した結論である。
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