研究概要 |
粘菌アメーバは土壌や朽木中の細菌のエンドサイトーシスによって捕食し増殖する。本研究の目的は,その際放出される溶菌性物質を探索し,分子的な細菌攻撃の機構を明らかにすることにある。次の結果が得られた。 1.溶菌性物質の活性測定法の確立 (1)濁度法(細菌の溶解による濁度の減少を測定する) (2)溶菌斑形成法(スライドグラス上の細菌懸濁寒天が溶菌によって透明になる大きさを測定する) この2つの法はどちらも有効であったが,2種の物質の関与が明瞭に示される後者が適していると判断した。 2.二重の溶菌斑形成 一般に溶菌斑は中心部がクリアーで周辺部がやや不透明な二重構造を示した。 3.イニシアルバースト(Initial Burst,仮称)現象の発見 好気条件下で粘菌アメーバと細菌がはじめて接触したとき,爆発的な溶菌活性が現れることがわかった。 4.二重の溶菌斑と溶菌性物質の性質 粘菌アメーバから放出される物質にはA,Bの2種類があってA,Bとも存在する部分はクリアーな溶菌斑となり,Aのみではやや不透明な溶菌斑となると解釈された。ゲル濾過からAは易熱性の高分子,Bは酸素の存在下,細菌との初接触で一時的に大量に放出される補助的な物質であると考えられた。 5.溶菌性物質放出とエンドサイトーシス現象との関係 シアン耐性呼吸の上昇,溶菌性物質の放出に続いて細菌の大量捕食が顕微鏡的に観測された。
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