研究概要 |
イネ科草本植物において、オーキシンは細胞壁マトリックス多糖類のうちβ-1,3:1,4-グルカンの分解を特異的に促進して細胞壁の粘弾性を低下させ細胞の伸長成長を誘導する。本研究では、オーキシンによるグルカン分解の促進機構を解明するために、トウモロコシ細胞壁のグルカナーゼと新規調節蛋白質AWPの構造と特徴、生体分布と発現、ならびに、それらの分子間相互作用について解析した。その結果以下に示す一連の成果を得た。 まず、(1)主要グルカナーゼ酵素蛋白質の遺伝子構造と細胞内局在および組織・器官分布を明らかにし、各酵素が単子葉植物の細胞壁に特有の蛋白質であると同時に各器官の伸長生長を規定する共通の重要な酵素であることを示した。次に(2)各酵素活性を促進する細胞壁蛋白質(AWP)の分離と機能の解析を進めその主要な活性化成分がキチナーゼ蛋白質であることをつきとめた。そして、(3)AWPおよび複数の生物由来のキチナーゼ標品を用いて、グルカナーゼ活性および細胞壁の自己分解能と粘弾性低下に対する明白な促進作用を確認した。これらのモデル実験から、オーキシンによる細胞壁代謝と細胞伸長の制御に、細胞壁のキチナーゼ蛋白質が深く関与している事実を初めてつきとめた。 本研究成果と内外の情報から、植物成長のオーキシン制御過程において、複数の細胞壁酵素蛋白質とそれらを取り巻くアポプラスト環境が重要であることを結論づけた。
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