研究概要 |
1)クリープ粘弾性計測条件の調査 : クリープ粘弾性計測には,変形荷重と変形速度の設定が重要である。変形速度は0.5mm/sec程度が適切であり,変形荷重は,根の断面積当たり20-25g/mm^2J程度が適切である。この条件で細部壁粘弾性をKelvin-Voigt-Bergersモデルに基づく物理常数で表せることが分かった。さらに、エンドウの根など伸展性の高い細胞壁には,このモデルの6要素モデルが適用できることが分かった(Tanimoto et al.,plant and Soil1,2000,in press)。 2)ジベレリンによる伸長成長と細胞壁粘弾性の変化 : 上記の条件でジベレリンの効果を調査した。ジベレリン合成阻害剤・アンシミドール処理によって細胞壁の伸展性が低下し、粘性係数と弾性係数が増加し、伸展性の低下が粘性係数と弾性係数の増加に起因することが示された。これら粘弾性係数の増加は、ジベレリン処理によって阻止された。粘性係数と弾性係数がジベレリンによる制御を受けていることが判明した。(論文準備中)。このジベレリンの作用がイネ科植物(イネ)と木本植物(チャ)にもみられるか否か継続研究中である。イネ葉鞘のジベレリン誘導伸長ではこの方法で細胞壁伸展性の増加が既に確認された(Planta,205,145-152,1998)。ペクチンとヘミセルロース分子およびそれらの水和性(湿度条件での挙動)との関係は研究継続中である。 3)酸成長と細胞壁の粘弾性 : 酸成長における細胞壁粘弾性解析は細胞壁の伸展性と粘弾性係数との関係を明らかにするために重要である。in vitroでのpHの低下に伴って,粘性係数の低下が特異的に認められ,pH3.0付近では,pH6.0の値の1/3以下に低下した。本研究で判明したin vitro酸性pHによる粘性係数の低下は,酸生長の一要因と考えられているExpansinなどによる多糖分子間の滑り現象に対応するのではないかと考えられる。なお、この知見はPlant and Soill誌に論文として受理された(Tanimoto et al.,Plant and Soill,2000,in press)。
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