研究概要 |
担子菌ヒトヨタケにおける性と形態形成の過程は,交配型遺伝子AとBの支配下にある。本研究は,交配型遺伝子下流で働き性形態形成を制御している遺伝子を同定することを目的として行い,以下の成果を得た。 1.交配することなく子実体を発生するhaploid fruiting株CopD-12から,総計1,018株の子実体発生に関する変異体をUV照射により誘発・分離した。 2.上記1の実験で得られた発生変異体のうち,子実体発生におけるパターン形成に異常を示し柄が短く扁平な子実体を生じる株について,分子遺伝学的な解析を行った。その結果,原因遺伝子eln2は新規のチトクロームP450をコードしていることが明らかとなった。 3.A遺伝子支配下の性形態形成,つまりクランプ結合形成が阻止される突然変異体を分子遺伝学的に解析し,原因遺伝子clp1をクローニングした。clp1は365のアミノ酸残基からなる新規たんぱく質をコードしていることが予想された。また,clp1のノーザン分析と強制発現の実験から,clp1の発現がA遺伝子支配下の性形態形成の誘導に必要且つ十分な条件であることが示された。 4.B遺伝子支配下の過程,つまり二核化における核移動に欠損を示すREMI変異株について分子生物学的な解析を行い,原因遺伝子num1(nuclear migration)をクローニングした。num1は217個のアミノ酸残基からなるタンパク質をコードしていた。また,Num1は3つのleucine zipper domainをもち,またC末側はcoiled coil構造をとるものであった。
|