研究概要 |
無脊椎動物であるザリガニのはさみ筋には,静止長9.3μmにおよぶ巨大サルコメアが存在する。そこには脊椎動物(静止長約2.4μm)のコネクチン(分子量300万)と同様な機能を持つタンパク質(3000K)が存在し、その弾性でthick filamentをサルコメアの中央に位置させている。しかし,なぜ300万という同じ分子量で,脊椎動物の4倍もの長さのサルコメアを維持できるのか,という疑問が生じる。本研究では,ザリガニはさみ筋の3000Kについて,一次構造の脊椎動物との違いから,問題解決を試みた。 まず,ザリガニはさみ筋3000KのcDNAクローニングを行い,45kb,約15,000個のアミノ酸配列を決定した。その結果,コネクチンと共通のモチーフ(IgとFn3 domain)も存在したが,その割合は20%と低く(コネクチンは90%以上),そのほとんどがunique regionと新規のくり返し配列,及び2つのPEVK element(弾性機能に深く関わると考えられており,コネクチンでは1つ)で構成され,コネクチンとは一次構造がかなり異なっていた。68アミノ酸で構成される領域の一部を融合タンパク質として発現させ,円偏光二色性を測定し,二次構造を予測した結果,Ig domainと同じくβ-sheetを多く含んでいた。また蛍光抗体法を用いた実験から、C末端はM線付近ではなく,AIjunction付近に局在している可能性が高くなった。 以上のように,弾性に関与していると考えられているPEVK elementが2カ所あることと,新規のくり返し配列が存在すること,さらに,C末端がAIjunction付近迄しか局在していないことが,脊椎動物の4倍もの長さを担う事が出来る要因ではないかと考えている。
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