研究概要 |
本研究では、コオロギの概日リズムを制御する視葉概日時計の振動機構に関与する蛋白質の発現機構を解析し以下の結果を得た.1.視葉概日時計の動きを視葉遠心性ニューロンの自発活動リズムを指標として恒暗条件下でモニターしながら,シクロヘキシミド(CHX)や5,6-dichlorobenzimidazole riboside(DRB)の連続投与により蛋白質合成を翻訳レベルと転写レベルで連続的に阻害すると時計が停止する.2.CHXで短時間阻害した場合、自由継続リズムが主観的昼の後半から前半に位相後退し,主観的夜の後半で位相前進が生じた.3.DRBでの位相反応曲線は,CHXのそれに較べ約6時間後退相,前進相とも早く起こった.4.視葉内でその量が主観的夜に増加する31kDa蛋白質量は,光,CHX,DRB処理による位相変位時に減少した.5.ショウジョウバエで時計機構に含まれることが示されている,PDF,PERIODもそれぞれELISAとWestern Blotによる解析から,日周変動することが分かった.6.抗PERIOD抗体を用いた免疫組織化学により,PERIOを発現する細胞が,視葉板-視髄間にあり,PERIODが核へ移行することも観察された.これらの結果は,視葉概日時計の振動機構に転写・翻訳を含む遺伝子発現系が必要であること,31kDa蛋白質が視葉時計機構に含まれることを強く示唆している.一方,コオロギ視葉時計機構にも,ショウジョウバエと同様にPERIODやPDFが関与することも示唆された.
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