研究概要 |
希土類元素であるErを10^<16>〜10^<22>cm^<-3>まで変化させた種々のSi : Erターゲットを使用し, レーザーアブレーション(LA)法によりSi : Er薄膜を作成した。このSi : Er薄膜中に含まれるEr含有量は, ターゲット中のそれとほぼ同量であることを二次イオン質量分析および蛍光X線測定結果から明らかにした。この結果は, LA法により容易に, かつ10^<22>cm^<-3>の高濃度までSi薄膜中へのErの添加が可能であることを意味している。これらの試料を用いてErに関与した1.54mm発光の赤外分光測定を行った。スペクトル形状はEr添加濃度に殆ど依存せず, 発光のピーク強度は2桁のEr添加量の増加に対して約3倍の増加に留まっていた。このことは, 1.54mmの発光強度は単純にErの添加量(発光センターの数)に比例していないことを意味している。この現象を明らかにするためにパルス光励起を行い, 1.54mmのErの発光線の時間応答測定を行った。この実験の目的は, 母材であるSi中に生成された電子・正孔対の消滅エネルギーがErイオンを励起し発光緩和する, いわゆるエネルギー移動現象を時間スケールで観測することにある。約0.16msの立ち上がり時間と約1.2msの立ち下がり時間の2つの指数関数で示される時間応答が観測された。また, 立ち上がり時間は10^<22>cm^<-3>の高濃度Er添加条件下でも殆ど減少しないことから, Erイオンの濃度消光は生じていないことが明らかになった。一方, 立ち上がり時間がEr添加量の増加に対して短くなることは, Erイオンを励起するためのエネルギー移動効率(Erイオンの励起効率)が減少することに起因していると結論づけられる。
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