研究概要 |
新しい紫外半導体レーザー材料として興味深い特性を有するワイドギャップ酸化亜鉛(ZnO)の量子井戸構造の作製を試み、その光学的特性を明らかにした。はじめに,ZnO中の量子や正孔を閉じこめるために,よりワイドギャップなクラッド材料として期待されるMgを含む材料系(ZnMgO)の結晶成長を行い,レーザーアブレーションによりMg組成が20%程度まで,ウルツ鉱構造を有する単結晶の作製が可能であることを明らかにした。さらに,そのバンドギャップはMg組成の増大に伴い,期待通り広がることが吸収測定より明らかとなった。次いで,サファイア基板上に多重量子井戸構造(井戸層:ZnO/クラッド層:MgZnO)の作製を試みた。透過電子顕微鏡の断面写真やX線回析のサテライト構造を検討することにより,10nm程度の周期構造(井戸層厚は最小で1nm程度まで)が精度良く作製できることが明らかとなった。さらに,これらの量子構造の電子構造の電子状態を調べるために,低温でのフォトルミネッセンスやフォトルミネッセンス励起スペクトルの測定を行った。フォトルミネッセンスの発光エネルギーは井戸幅の減少に伴い,高エネルギーシフトを示す。フォトルミネッセンス励起スペクトルに観測される吸収構造および理論計算との対比により,このピークシフトは量子効果であることが明らかとなった。発光ピークと吸収ピークのエネルギー位置の違いに加え,フォトルミネッセンススペクトルの温度特性の結果により,作製したZnO量子井戸の低温での発光特性は,局在化した励起子により支配されていることが明らかとなった。
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