研究概要 |
本研究の目的は,電子顕微鏡観察下でサブμm微粒子の機械的配列により製作したフォトニック結晶の可視光領域での光学特性を,散乱光の角度分布に着目して実験的・理論的に解析することにより,フォトニック結晶におけるフォトンの振る舞いを明らかにすることであった. まず,試料製作方法に関しては,操作可能な微粒子サイズを真空系の改良により,従来2μmから0.5μmまで向上した.また,それ以上の向上を制限しているのがH2Oなどの残留ガスであることがわかった.製作したフォトニック結晶の特性評価方法としては,様々な波長の単色光や白色光の平面波を結晶に任意の角度で入射し,結晶から生じる散乱波の角度分布を計測できる顕微制限視野回折光学系を構築し,結晶の構造や光の入射角や波長を変えて散乱波の生じ方を系統的に調べた.その結果,ほぼ下層から上層に連なる多連球を貫く方向に光を入射した時に,極めて強いブラッグ回折が生じることを発見した.その回折効率の波長依存性は単一球のミー散乱特性とほぼ対応していた.さらに,ベクトル調和関数展開による有限微小球配列体の電場を完全に計算する手法を新たに確立し,より直接的にフォトンの振る舞いがわかるようになった.この計算により,実験で観察された結果はすべて再現できた.多層格子のブラッグ回折では,わずか数個の球でできたユニツトで強いブラッグ回折が生じていることがわかった.誘電体球で構成されたフォトニック結晶は,多連球が散乱体ユニットを構成しており,その間を光がうまく伝搬できるときにだけ強い回折が生じると理解できる.また,微弱であるがコヒーレント後方散乱光が存在することもわかった.
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