研究概要 |
本研究は電磁場の基本粒子である光子について,その単一光子状態を発生させる技術を確立し,もって光子の非古典的性質の実験的解明に寄与し,延いては単一光子による究極の省エネルギー光通信技術の基礎とすることを目的とした。基本的には光励起された原分子のラビダイナミックスによる「自己制御性」を利用して単一蛍光光子を発生させる。この場合自由空間においては原・分子が多数の電磁場モードに結合し得るため,光子のモードを固定できないが,マイクロキャビティに原・分子を置いて,蛍光放射モードをキャビティモードに限ることにより光子の捕獲収率を上昇させ,確実かつ利用可能な状態で,単一光子状態を発生させることを目指した。 このために必要なマイクロキャビティ等を作成し,封入色素rhodamine6Gを発光源として、ハンブリィ-ブラウン・トゥイス形の測定系を構築して量子論的二次コヒーレンス度を測定すると共に、マイクロキャビティ内での発光過程の理論的研究を行った。発光分子を試作した平行平板形マイクロキャビティのキャビティ領域に封入し、パルス幅7nsのNd:YAGレーザーの第二高調波(532nm)で繰り返し10ppsで励起した。色素濃度を5×10^<-3>から5×10^<-5>mol/lで5種類用意し、各々について励起入力を変えながらゲート時間30nsで相関を取った。高濃度、高励起の場合には統計はポアソン的となった。逆に低濃度、低励起の場合には統計はボース・アインシュタイン的となった。非常に弱い励起においては一光子が放出される現象が捉えられたが、その生起確立は百分の一程度であって、光子数確定状態を得ることには低濃度化による一分子発光など更なる工夫を要する。理論面では発光の三次元解析、二原子相互作用等において進展を見た。
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