研究概要 |
本研究によって,立地問題での従来の知見を覆す2つの数理的な発見を行った. 1.2次元の立地問題で3主体がシェア1位を求めて行動する場合,利用者(あるいは有権者の)の密度分布が回転対称で単調減少の場合,Nash均衡解が存在する.これは主体の行動基準が利益最大(得票率最大)である場合に対する1985年のShakedの否定的な結果と対照的な結果を与えている.特にこの問題は,既存の「合理的投票理論」での見方に大きな転換を与えるものである. 2.1次元の立地問題で,小選挙区制を想定した場合,適当な仮定の下で,2大政党制が自然に成立することが示された.これは合理的投票理論での長年の未解決問題の解決を与えている. これらの2つの結果に加えて,本研究を与えるきっかけとなった金融時系列の問題,さらにはそれらの基礎となる数学の問題に対してもいくつもの知見を得たが,そのうちで重要なものは以下の通りである. 3.株価変動を単なるランダムウォーク(あるいはその変種)と捉えるのではなく,売り呼び値と,買い呼び値を考慮して「測定誤差」があるとして,Kalman Filterでモデル化すると高精度の推定が出来ることを発見した.これは株価変動モデルに対する重要な知見である. 4.金融時系列に対する分散変動モデルのパラメータ推定において,測定期間が短い場合には,下方バイアスがあることが知られているが,このバイアスはモデルのずれで拡大されることを示し,従来の金融時系列モデルに異なった視点を与えた. 5.正行列に対する第2固有値のための十分条件を得た.
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