研究概要 |
平成11年度には,以下の研究(I-IV)を行った。 研究(I)破壊のクライテリオンに関する研究 飯館花こう岩の円柱試験片を用いて室温から500℃の温度,150MPaまでの封圧,ならびに50MPaまでの間隙水圧の条件で三軸圧縮試験を行い,せん断軟化則の測定を行った。せん断強度の温度依存性を明らかにし,本実験条件の範囲内ではせん断軟化則は封圧,間隙水圧に依存しないことを示し,深度によらず評価したせん断軟化則をき裂進展のクライテリオンとして採用できることを見出した。 研究(II)模擬水圧破砕実験 円筒内圧試験片を用いて,研究(I)と同じ温度・封圧条件下における模擬水圧破砕実験を実施した。軸応力と封圧の差応力が比較的小さい場合には地下浅部で通常観察される開口型の水圧破砕き裂進展が発生するものの,差応力が比較的大きい場合にはせん断型のき裂進展が観察されることをはじめて見出し,地下深部の水圧破砕では地殻応力場の大きさによってはせん断型破壊の発生する可能性のあることを示した。 研究(III)き裂進展解析コードの作成 平成10年度に作成したき裂要素を適用した水圧破砕の有限要素解析コードに基づき,新しく研究(I)の破壊クライテリオンを組み込み,研究(II)の地殼応力場を仮定し水圧破砕き裂進展解析を行った。本解析コードにより,研究(II)で得られたき裂進展の傾向をほぼ再現できることを示した。 研究(IV)大深度水圧破砕き裂進展の数値解析と貯留層形成プロセス 水圧破砕解析コードを活用し,岩体の自重により誘起される地殼応力場を対象に貯留層形成プロセスを検討することにより,地下浅部の水圧破砕では初期き裂からほぼ開口型でき裂進展し,地下深部(lOkm程度)の水圧破砕では初期にせん断型破壊が発生した後に開口型に遷移することを示した。
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