研究概要 |
大型構造物すなわち,船舶,航空,宇宙機器,火力・原子力発電設備,化学プラントなどは,そのいずれにおいてもそれらの主要部分が大破壊を起こすと多大の人命の損失と,物的損害をもたらすことは明らかでありそれらのもつ杜会性は重大である.これらの破壊を未然に防ぐためには,適切な非破壊検査手法を用いて欠陥を検知あるいは予知し,その定量評価に基づく健全性評価を行うことが肝要である.しかし機器・構造物の非破壊検査に実際に用いられている様々な手法は,検出感度・精度,利便性などの観点から決して十分とは言えず,新しい検査手法の開発が望まれている. 本研究は,以上の現状に鑑み,稼働中の原子力発電設備などの接近困難な場所においての遠隔探傷,探傷精度の向上および検査技術者の疲労軽減のための自動探傷,探傷感度の影響因子である欠陥と励磁方向との交差角度の影響を除去することにより多重き裂に適用,き裂の画像データおよび漏洩磁束分布を同時に得ることによる欠陥情報の多様化,強磁性体および常磁性体の構造物での探傷が可能である新しい遠隔光探傷法の開発を行ったものである. 具体的には,開発された磁気光学探傷システムによる基本的探傷例,常磁性体への適用,自動計測システム,遠隔探傷法に関して検討した結果について記述するとともに,本計測システムにより計測される漏洩磁束分布を用いた,3次元き裂形状評価のための逆問題解析手法の開発およびその最適化に関しても記述している.本逆問題解析手法は,ダイポールモデルに基づく従来の手法における問題点の一つである,き裂面上での磁化の分布が一様であるとする点を改良し,磁化に分布を与えることで,評価制度を向上させることに成功している.
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