| 研究概要 |
本研究は,損傷力学と有限要素法に基づく損傷・破壊シミュレーション法を工学的破壊解析法として完成させるため,き裂の数理的モデル化,有限要素依存症の本質的要因の解明,要素非依存な解析方法を確立するための基礎的問題について理論的ならびに実験的に検討することを目的とする.主な研究成果は次のとおりである.
1)クリープき裂の数理的モデル化の検討を行うため,250℃無酸素銅平板中のモードIクリープき裂先端近傍の粒界き裂分布を顕微鏡観察し,これらのき裂密度場を同定した.この結果,定常進展するモードIき裂先端の損傷場の等高線は,き裂前方向には半だ円状であり,その後方はき裂面に平行となることを確かめた.
2)クリープき裂過程の確率的特性をモデル化する方法として,有限要素法の各要素における損傷変数の臨界値を正規分布させた解析を行い,実験結果と比較した.さらに,材料の結晶粒界の方向が不規則に分布すると仮定し,その微視的材料特性を有限要素の各要素特性に反映した解析も行った.実験結果がよくシミュレーションできることを示した.
3)損傷・破壊シミュレーションにおける有限要素依存の一つの大きな要因としてのき裂先端の応力特異性を明らかにするため,モードI及びモードIIIき裂先端の応力特異性に対するき裂先端損傷場の影響を解析した.き裂先端に半円状の損傷場を仮定して,半逆解法を用いた.解析の結果,非線形材料に対するHRR特異性は損傷場によって非特異となりうることを明らかにした.
4)クリープき裂が比較的速く進展する場合には,き裂先端での応力変化の影響が無視できない.このため同様な解析を,弾性-クリープ損傷材料中のモードIならびにモードIIIき裂に対して行った.得られたき裂先端応力場とHRR応力場ならびに弾性-クリープ材料に対するHR場との違いを明らかにした.
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